BACK スー・クラーク  B&B(全文)    NEXT ダブリンのタクシー
  中華レストランは漢字のカンバンですぐわかった。店内は、二人用から広いテ−ブルのある大きい店だ。2時近くなのにほぼ満席でかなり人気のようだ。左側の壁側に、二人用のテ−ブルが空席になっていたので勝手に座った。左隣に50過ぎの夫婦、右隣に30歳ぐらいの夫婦が座っている。若者の客は少ない。若い中国人ウエイトレスが二人と、チ−フらしき50歳位の男の中国人が忙しそうに対応をしている。男は神経質そうで、メニュ−をもって来た。ガイドブックに、ランチのセット・メニュ−が紹介されている。「セットメニュ−はありますか」と尋ねると、彼はまくしたてるように早口で「何か」言った、怒られているみたいだ。彼が、「今日はない」と言ったのか聞き取れなかった。「横柄な」態度にむかついたので、「決まれば呼ぶ」と言ったら、何も言わずに奥に入っていった。右隣の二人はメニュ−を見ていた。ウエイトレスが来ると何かを注文した。

 左側の客は食事を終えて、お茶を飲みながら世間話しをしている。僕は「初めての店」に行った時は、隣の人が食べている物をチラリと横目で見て、それが美味しそうならそれを頼む事にしている。メニュ−を見ただけでは、どのような物が出てくるかわからない。日本のようにメニュ−にサンプルの写真がない。食材も日本にない物もあり選択に苦労をする。メニュ−から、ス−プ、肉料理、ライスを注文した。デザ−ト無しで、ビ−ルを飲む事にした。手を挙げ合図をすると、直ぐに若いウエイトレスがやって来た。彼女にギネスはあるかと尋ねたら、「ギネスはありません。バッドワイ−ザ−しか」と答えが返ってきた。あの早口の無礼な中国人とは対照的で、落ち着いたやさしい感じの中国女性である。ビ−ルを飲んでいると、お隣の彼らに料理が来た。「五目ソバ」と春巻きのようだ。美味しそうなヌ−ドルを、小さいおわんに入れ二人で食べ始めた。言葉少ない質素な身なりの夫婦である。

 コーヒーを飲んでいる左隣の夫婦と、目が会ってしまった。仕方なくお互いに会釈をした。腕まくりしている彼の左手首の上に、小さい入れ墨が見えている。「見る側」にとっては不愉快だ。ビールとス−プが来た。スープは、「フカヒレ」のようなタイプでおいしい。肉はちんげん菜と甘辛く炒めたもので、「ニラ、レバ−炒め」のような味付けで、熱々の鉄板に乗って来た。「ジュウ、ジュウ」と音を立て美味しそうな臭いをさせている。とても、美味しい。2時過ぎなのに客は絶えない。店を出て、広いグレイト・ジョ−ジ−ズ通りからウイリアム通を左に折れた。通りは、車がやっとすれ違える程の小さなレンガ造りの路地だ。3〜4階建ての古いビルが並んでいる。キング通りに出た。ここも、車はほんとうに少ない。前方の古い赤レンガの塀に、「パ−キング」のカンバンが掛かっている。ダブリンンで初めて見た唯一の有料駐車場だ。100台ほど駐車出来る広さで、古い倉庫か工場を壊して造った様だ。左奧には古い赤レンガ壁の一部が壊れたまま残っている。整地されただけの原らっぱに、40〜50台の車がきっちり並んでいる。